潜水業務の管理
潜水業務の計画と管理
- 労働者の安全と健康の確保は、事業者が果たすべき社会的な責任のなかで最も優先されるべき事項であり、潜水作業では、高気圧安全衛生規則で、その旨を事業者に義務つけています(高圧則第1条)
- その主体となるのが、作業計画、手順書の作成、安全管理活動となります。
潜水作業計画の立案
- 潜水業務に関してあらかじめ作業計画を立案し、関係者に告知し、それに基づいて作業を実施しなければなりません。(高圧則第12条の2)
作業計画
- 送気またはボンベに充填する気体の成分組成
- 潜降を開始するときから浮上を開始する時までの時間(滞底時間)
- 当該潜水作業における最高の水深圧力
- 潜降及び浮上の速度
- 減圧の方法(浮上停止深度(圧力)と停止時間)
- 「リーフレット参照」を記載しなければなりません。
- 画一的なものとせず、創意工夫して、特に自然環境下では、前日と同じ業務であっても、天候・場所などに作業条件が変化するので、変化に応じた中止基準を設け、安全に作業しなければなりません。
- 潜水作業は、潜水者だけでなく、船上などの支援者との共同作業になるので。各自の役割分担を確実に実施することが大切です。
潜水業務の管理
- 潜水作業者等人の管理や潜水機器等物の管理について、「高圧則」で定められています。
- この基準は、潜水者の安全確保のための最低限の基準であるので、適宜追加するなどして、運用しなければなりません。
- 潜水業務の管理には大きく分けて次の3つに大別できます。
- 1 潜水士業務に従事する人に対する管理
- 2 潜水器や潜水装備など潜水作業に使用される機器の管理
- 3 潜水方法などの作業管理など
潜水作業者等、人の管理
- 潜水士・・・潜水士免許を受けた者
- 監視員・・・潜水作業者の異常を監視する者(自給式潜水)
- 支援員・・・潜水者の装備脱着などを補助する者(送気式潜水)
- 管理者・・・潜水作業者と常時連絡を取りながら業務を管理する者
- 操作員・・・各種器材を運用する者
- 監視員や管理者は特に資格は必要はない。
- 送気員・・・送気式潜水で送気を調整する者
- あらかじめ特別の教育を受けていることが行う必要です。
健康管理
- 雇入れ時及びその後6か月に1回の定期の特殊健康診断の実施
- その結果を高気圧業務健康診断結果報告としての労働基準監督署長への提出
- 高気圧業務健康診断個人票の作成
- 記録の5年間の保存
- 潜水前と潜水後の健康状態の管理
- 診断の結果、異常がある者、特定の疾病に罹患している場合には、医師が必要と認める間、潜水業務を行わせてはなりません。
潜水機器等、物の管理
送気式潜水方式の場合
- 空気圧縮機(コンプレッサー)
- 不慮の事故のときのため、潜水者を安全に浮上させるため、予備空気槽に必要最低限の圧縮空気を貯留しておく必要があります。
- 予備空気槽の構造は、最大潜水深度の水圧の1.5倍以上の耐圧を有し、その容積は以下の式により決定さる値以上出なければなりません。
- ※ 必ず試験に出題される公式です。覚えましょう。
- 潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合(圧力計が必要)
40(0.03D+0.4)
V=ーーーーーーーーーーーー
P
それ以外の場合(流量計が必要)
60(0.03D+0.4)
V=ーーーーーーーーーーーー
P
V・・・空気槽の内容積(リットル)
D・・・最高の潜水深度(m)
P・・・空気槽内の空気の圧力(MPa)
- 予備空気槽は、各潜水者ごとに設置しなければなりません。
- 緊急ボンベ(ベイルアウト)を潜水者が携行する場合には、予備空気槽を設けなくてもよい場合があります。
機器設備類の点検
- 高圧則第34条で定められています。
潜水前に行う点検
- 潜水器、送気管(ホース類)、逆止弁、信号索、さがり綱(潜降索)
定期に行う点検
- 空気圧縮機または手押しポンプ・・・・・・1週間ごと
- 空気清浄装置・・・・・・・・・・・・・・1か月ごと
- 水深計・・・・・・・・・・・・・・・・・1か月ごと
- 水中時計・・・・・・・・・・・・・・・・3か月ごと
- 流量計・・・・・・・・・・・・・・・・・6か月ごと
- 点検結果の記録の保存は3年間
自給式潜水の場合
- 圧力調整器(レギュレーター)は、ボンベの貯気空気圧が、1MPa以上の場合は、2段階以上の減圧方式のものを使用する。
機器設備類の点検
潜水前に行う点検レギュレーター
- 定期に行う点検
- 水深計・・・・・・・・・・・・・・・・・・1か月ごと
- 水中時計・・・・・・・・・・・・・・・・・3か月ごと
- ボンベ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6か月ごと
- 点検結果の記録の保存は3年間
再圧室
- 再圧室は、水深10m以上の潜水の業務を行う場合に生じる高気圧 障害を最小限にくい止めるための救急設備で、常に利用できるような体制を整えておかなければなりません。
- 高圧則第42条では再圧室を設置又は利用できるような装置を高ずることが義務付けられていますが、必ずしも潜水現場に再圧室を用意しておく必要はなく、いつでも利用できるような準備を整えておけばよいとされています。
再圧室の設置場所
- 高圧の空気や酸素を使用するため、火災の危険性が高いことに注意しなければなりません。
- 危険物、かやく類、多量の可燃性の物質の貯蔵保管場所の付近は避けなければなりません。
- 出水、なだれ、土砂崩れなどにより損壊を受けるおそれがある場所には設置してはなりません。
立入禁止の措置
- 設置した場所や操作する場所にはみだりに人が立ち入らないよう関係者以外の者は立入禁止としなければなりません。
再圧室の使用と点検
再圧室の使用
- 使用前の点検
- 事前に送気、排気、警報設備などの作動状況を点検します。
- 純酸素で加圧しない(再圧室の場合であることに注意。酸素減圧ではない。)。
- 高圧の酸素と油類がの接触により、火災の危険性があり、瞬時に全焼状態となるため、純酸素で加圧はしないことです。
- 副室の完備
- 何らかの事故が発生した場合の避難する方法として副室を設け、使用時には主室と副室内を同圧力にしておき、いつでも移動が可能な状態しておくことが必要です。
- 常時監視
- 加圧・減圧・異常の有無を常に監視させておくことが必要です。
- 使用記録の管理
- 必ず加圧・減圧の状況、時間、圧力、再圧室内の状況などを記録しておかなければなりません。
点検
- 設置時及びその後1か月以内ごとに点検する
- 送気・排気設備、通話、警報装置、漏電、機械の損傷の有無
- 点検記録結果は、3年間保存しておかなければなりません。
- 送気・排気設備、通話、警報装置、漏電、機械の損傷の有無
- 危険物の持込み禁止(マッチ・ライターや点火源となるもの)
潜水作業の管理
潜水作業時間の厳守
- 潜水(滞底)時間
- 浮上(減圧)時間
- 潜水深度と潜水時間に応じた浮上停止深度及び時間
- 潜水が完了してから次回の潜水開始時間までの時間
浮上速度の遵守
- 毎分10m以下の速度で浮上すること。
- 最大潜水深度から最初の浮上停止の深度までの浮上
- 浮上停止深度間の浮上
送気量と給気能力の通知
- 送気量は潜水深度の圧力下での送気量を送気します。
- 定量送気式潜水器(ヘルメット式)は毎分60リットル以上
- 応需式潜水器(デマンド式)は毎分40リットル以上
- 自給気式潜水ではボンベの給気能力(残圧)を確認します。
浮上の特例
- 事故などの緊急事態により、規定された水中での減圧が行えない場合には、浮上速度を速めたり、浮上時間を短縮することができます(高圧則第32条)。
純酸素の使用
- 圧潜水において、減圧のために水中拘束時間を安全に短縮する目的で、潜水者が溺水しないような必要な措置を講じた場合、規定の酸素分圧の範囲内において純酸素を呼吸することが可能です。
- 高圧則第15条
潜水者の携行物
送気式潜水の場合
- 信号索、水中(潜水)時計、水深計、鋭利な刃物
- ただし,潜水者と連絡者が通話可能な場合は信号索、水中時計、水深計は携行しなくてもよいことになってます。
自給気式潜水の場合
- 水中時計、水深計、鋭利な刃物、救命胴衣又はBCジャケット(浮力調整具)
さがり綱(潜降索)
- いかなる潜水方式の場合でも、潜水の業務を行う際には潜降・浮上のための潜降索を用意し、潜水者に使用させなければなりません。
- 潜降索には、浮上(減圧)停止深度を表示する木札、布などを取り付けておかなければなりません。
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