飽和潜水
飽和潜水
飽和潜水とは
- 潜水では、深度が深ければ深いほど、潜水時間が長ければ長いほど、体内に不活性ガスが溶解するため、減圧時間に長時間を要することとなります。
- 減圧時間が過度に長くなると、その潜水(総潜水時間)のほとんどが浮上時間(減圧に要する時間)となってしまい滞底して作業する時間が少なくなり、潜水効率が低下してしまいます。
- 体内への不活性ガスの溶解には限界があり(ヘンリーの法則の「飽和」を参照)、この限界に達するとそれ以上は溶解量が増えることはないので、長時間潜水しても減圧時間がそれ以上は増えることがありません。
- 窒素については、海面上の呼吸分圧は、0.78kPaで、水深10mでは、158kPaとなり、そのまま潜水を続けると約48時間で体内組織に窒素は飽和します。
- そこで、あらかじめ体内に溶解する不活性ガスの飽和状態に近い状態から潜水業務を始めれば、大深度での潜水を安全かつ効率よく行うことができます。この飽和を利用した潜水方法を飽和潜水といいます。
飽和潜水の方法
- 潜水者はあらかじめ、「船上減圧室」で潜水作業予定深度よりも多少浅い深度の圧力まで加圧されます。
- そこから専用のダイビングベルに乗り込み、目標作業深度まで降下し、そこから潜水装備を着用して、水中に出て作業をします。
- 終了後は、ダイビングベルに戻り、船上の減圧室内で生活し、数日間潜水作業を従事した後、減圧室内で徐々に大気圧まで減圧します。
長所
- 大深度、長時間での潜水が可能となります。
- 無限圧潜水範囲は、通常の大気圧無限圧潜水より範囲が広くなります(通常の無限圧潜水は、水深10mまでですが、あらかじめ不活性ガスが体内に飽和している状態なので、飽和深度からの無限圧潜水の範囲は大きくなります。)。
- 数回から数日に分けて行われる潜水作業が1回の潜水で終わるため効率がよくなります。
短所
- 潜水に要する時間が数日間に及びます。
- 潜水者の身体的・生理的・心理的な負担が大きくなります。
- 装置が大掛かりなものとなり、装備や支援者が多大に必要となります。
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