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改正潜水士テキスト対応、令和出題の過去問題の解答と解説を簡単に学ぶことができます。合格者多数、潜水業務やダイビングインストラクターには必須の資格です。

潜降及び浮上

潜降及び浮上

  • 近年の潜水業務の実情に合わせて、スクーバ式、全面マスク式の潜降及び浮上がより詳しく掲載されております。

潜降

潜降時の注意点

  • 潜水業務の事故には、潜水設備や器材によるものが少なくないので、潜水者は、いきなり潜降を開始せず、ます、水面付近で潜水器や送気系の状態を確認します。
  • 潜水はしごやさがり綱(潜降索)を利用し、異常がないことを連絡員に伝えてから潜降を開始しなければなりません。


深度

  • 高圧則第15条では、窒素の分圧の上限を400kPaと定めているので、空気潜水では約40mまでに制限されます。
  • 空気中の窒素の割り合いを1気圧の中に約0.78%で、1気圧は約100kPa、水深10mは約100Kpaですから、400kPaの水深は、ゲージ圧力で
  • 400÷0.78-100=512.82ー100
    • 412.82kPaとなり、41.2mとなります。
  • ですが、潜水状態で1m単位の深度を管理することは困難なことから安全のため浅い水深の40mを限界とします。
  • 空気潜水で、40m以上の水深に潜水することは、不可能ではありませんが、窒素酔いなどから、事故にいたった経緯もあり、安全を考える労働安全衛生法や高気圧安全衛生規則が定められていることからもそのような潜水はしてはなりません。
  • また、国際的な基準にも空気潜水での深度の限界はおおむね一致しており、それより深い潜水は、空気潜水ではなく、混合ガス潜水で潜るよう高圧則も一部改正されたものです。


適正な潜降深度

  • 潜降速度に規定はありませんが、無理に早く潜水すると、スクイーズや耳の圧外傷にかかり、難聴などになるおそれもあります。
  • 潜降途中では必ず耳抜きを実施し、できないときは潜降をいったん停止してゆっくりと潜降して、耳抜きができないときは、中止するなどしなければなりません。
  • 潜降途中でめまいを感じることもありますが、いったん潜降を停止するとほとんどのめまいは解消されます。


浮上(減圧)

適正な浮上速度

  • 減圧潜水では、あらかじめ計画された減圧スケジュールによって、浮上(減圧)停止深度、停止時間で、浮上を停止しなければなりません。
  • 浮上速度(海底から浮上停止深度まで、浮上停止深度から次の浮上停止深度までの浮上、浮上停止深度から海面までなど)は、高圧則第18条及び第27条によって、毎分10メートル以下で行うよう規定されています。
  • 実情は、浮上速度を正確に測ることは難しいので、呼気による小さい泡の浮上速度と同じか、追い越さない程度のゆくりした浮上が必要です。
  • このようにゆっくり浮上しなければならないのは、第3編の高気圧障害(空気塞栓症)にり患するおそれがあるためです。
  • また、水面近くでは、頭上の障害物、ボートの底の推進器によるケガがおおいので、特にスクーバ潜水では、海面上をよく見て浮上しなければなりません。
  • 無限圧潜水の範囲であって、浮上停止をすることが求められない場合でも、深度3m前後で5分程度停止することが、アマチュアダイバーなどで推奨されていますが、望ましいとされています。


急速な浮上

  • 急速な浮上には、大きく分けて2つあります。
  • 浮力調整に失敗し、吹き上げ(ブローアップ)によるものと、潜水器などの装備や気象状況の急変などにより、減圧の途中でも浮上しなければならない場合です。

浮力調整の失敗による急速な浮上

  • ヘルメット潜水やドライスーツ、浮力調整具(BC)などを着用した際に、浮力の調整失敗(吹き上げを参照)でおこり、無限圧潜水(浮上停止がいらない)でも起こるので、発生した場合は、直ちに再圧処置を講じなければなりません。
  • 特に口からの出血は、空気塞栓症にり患している場合がありり患する可能性もあります。
  • このようなことがないように浮上の際は、さがり綱(潜降索)を使用することが必要です。

潜水器の装備異常や気象状況の急変による急浮上

  • 浮上(減圧)停止を途中で中止するために減圧症に罹患する可能性が高いので、再圧処置を講じなければなりません。
  • その緊急度は、減圧を省略いた程度により左右されますが、規定の減圧時間を大きく逸脱(減圧した時間が少ないほど)した場合は重症に陥ることが高まります。
  • 減圧症をおそれるために、そのまま潜水者を水中に留まらせることは、溺れでしまうことになるので、ちゅうちょすることなく浮上させなければなりません。
  • そのために救急の再圧や救助方法について万全の準備をしておくことが必要です。


潜降および浮上の具体的な実施方法


スクーバ式潜水

潜水準備

  • 潜水士だけでなく、潜水作業に関わるすべての関係者に潜水業務の情報を周知徹底しておきます。
  • 潜水はバディ(二人一組)方式が用いられることが多いので、バディ同士で役割、合図、緊急時の支援などについて確認しておきます。
  • 水中での唯一の給気源となる高圧ボンベは、他人まかせにせず、必ず自分で確認します。
  • 潜水士自身によって、潜水器材の装備チェック、給気ボンベのバルブが開いていることなどを確認することはもちろん、バディ同士で確認したり、そのほかの支援の人達も確認します。
  • レギュレーターからスムーズに呼吸ができるか確認します。

潜降

  • エントリー(水面に入る)
  • 船からの場合
    • 水面を観察し、水面下に障害物がないかを確認します。
      • 水面下が確認できないときなどは、はしごがあればそれを利用します。
    • あごを引いて、後頭部がボンベにぶつかることのないように注意します。
    • 水面に飛び込んだ際の衝撃で、マスクとレギュレーターが外れないように片手で保持します。
  • 潜降方法としては、
    • ステップインエントリー(ジャイアントスライド)
      • 立ったまま、水面に向かって、大きく足を一歩踏み出して水面に飛び込む方法
    • バックロール
      • 船の舷などにでん部を座らせて、そのまま後方に回転しながら背中から水面に飛び込む方法
    • 他にもフロントロールなどがあります。
  • 岸からの場合
    • 腰の深さまで歩いていき、そこから水平の姿勢で潜降してきます。
    • 波が高いときは、後ろ向きに進んで波の力をかわしながら進みます。
    • ドライスーツの場合は、肩の高さまで歩いて、スーツ内の余分な空気を排出してから潜降します。

潜降の仕方

  • 水面で潜降前に、再度、器材、ホースなどからの空気漏れがないか、呼吸は異状なくできるかを確認します。
  • コンパスや目標物を定めて、さがり綱(潜降索)を使用して潜降を開始します。
  • 耳は、2~3mの水深ですぐ圧迫を感じので、そのときは耳抜きを行います。
    • 耳抜きが可能な速度で潜降し、耳抜きができないときは一旦潜降を中止するなどして無理をしないようにします。
  • BCを装着している場合、インフレーターを左手で肩より上にあげて、排気ボタンを押すとBCの空気が抜けて浮力を失い潜行を始めます。
    • 排気ボタンの操作ミスは、潜水墜落を起こすことがあるので慎重に行います。

潜水中の注意

  • マスクの中に入ってきた水は、深く息を吸い込んでマスクの上端を指で押さえて顔に押し付け、鼻から強く息を吹き出すと水はマスクの下端から排出されます。
  • ボンベの空気量に潜水時間が制限されるので、常に残圧計に注意して、無駄のないように作業するようにします。
  • 常にバディの状態にも注意します。
  • 呼吸は、一定のリズムで行い、故意にボンベの空気量を長持ちさせるような断続的な呼吸方法(スキップ呼吸)はしないようにします。
    • 炭酸ガス中毒、減圧症などのリスクを高めることにつながります。
  • 潜水中の遊泳は、両腕を伸ばして体側につけ、足を静かに上下にあおるようにして遊泳します。
    • ただし、視界の利かないところでは腕を前に伸ばして障害物の有無を確認しながら遊泳します。

緊急時の対処の仕方

  • 万が一の事故発生に備え、水面で潜水装備を取り外し、それらを引っ張って遊泳する訓練をしておきます。
  • 潜水者が単独ではどうしても、魚網などから脱出できないときには、潜水装備を捨てて脱出・浮上します。
  • 潜水装備を捨てるのは、最後の手段であり、あらゆる手段を試みるまでは、ボンベからの空気供給を自ら絶つべきではありません。

浮上

  • 作業が終了したり、浮上開始の予定時間になるか、残圧計の針が警戒領域に入るなどしたときは、バディ潜水者に浮上の合図を送り、了解の返信を待ってから浮上を開始します。
  • インフレーターを左手で肩より上にあげて、いつでもインフレーターの排気ボタンを押せる状態で顔を上に向け、周囲に障害物がないことを確かめるために、体を360度回転させながら浮上します。
  • 浮上速度は毎分10m以下で、目安として自分の排気した小さな気泡を追い越さないようにします。
  • 視界が極端に不良のとき、浮上か潜降しているのかの判断として、マスクの中の空気が膨張して縁から出ようとするときは浮上しており、マスクが顔に押付けられるようなときは沈んでいます。
  • 救命胴衣を使用する場合は、救命胴衣は水面に浮上してから使用します。
  • 無停止減圧の範囲内の潜水であっても、水深3m前後で5分程度浮上停止を行ったほうがよいとされています。
  • エキジット(水面から出る)
    • 潜水はしごを利用して、水面から船上などに上がります。
    • 潜水はしごの耐久性や潜水者の体力の状態によって、先にウエイト、ボンベ、器材などの重量物を体から取り外し、船上に引き上げてもらってからはしごを上がるようにします。

バディブリージング

  • ボンベからの空気供給が途絶したりした場合には、潜水者を救助する方法として、バディ潜水者から空気の供給を受ける「バディブリージング」が用いられます。
  • バディブリージングは、危険が伴うので、安易に行うものではなく、また、万が一の場合に備えて直ちに再圧治療できる緊急対応を整えた上で、訓練を行い技術を習得することが望ましい。
  • バディブリージングの方法
    • 空気供給にトラブルが生じた潜水者は、潜水器のマウスピースを指差しながら、バディに状況を知らせます。
    • 潜水者同士は、紐や相手の腕をつかみ離れないようにします。
    • 呼吸に支障がない側が、一呼吸後に、トラブルのあった潜水者に自分の潜水器(レギュレーター)を渡します。トラブル側はそれを奪い取ってはなりません。
    • トラブル側は、十分な呼吸を2回行い、潜水器を返します。
    • 支障がないバディが潜水器を受け取り、同じく2回呼吸し、再びトラブル側に渡して以後、これを繰り返します。
    • 安定して潜水器の受け渡しが行えるようになったら浮上を開始します。
    • 浮上中、潜水器を使用していない潜水者は、空気の過膨張による空気塞栓症を防ぐため、常に息を吐き続けていなければならず、決して息こらえをしてはなりません。


送気式潜水

  • 送気式潜水については、混合ガス潜水が認められたことから、その潜降及び浮上については、様々なガスが用いられ、また、全面マスク式潜水、ヘルメット式潜水など様々な器材、潜水者の潜降及び浮上を助ける潜水ステージやダイビングベル(後述参照)などの機材の使用など、送気式潜水の潜降及び浮上方法を一様に決めることはできません。
    • ですから、主に空気を使用した全面マスク式潜水の潜降及び浮上の仕方について、記載しています。

潜水準備

  • 潜水士だけでなく、潜水作業に関わるすべての関係者に潜水業務の情報を周知徹底しておきます。
  • 送気設備(コンプレッサー)を起動し、正常に作動し、空気圧力・送気量に異状はないか、送気管、送気ホースに空気漏れやはないかなどを点検します。
    • コンプレッサーの故障は、即座に事故に繋がるので、Vベルトの劣化、亀裂、張り具合などもよく点検します。
      • 高圧ボンベを使用する場合は、ボンベの空気圧力や状態も点検します。
  • 潜水士自身によって、呼吸状態、潜水器材の装備チェック、逆止弁、通話装置を確認することはもちろん、その他、連絡員や支援の人達も確認し二重のチェックをします。

潜降

  • エントリー(水面に入る)
  • 船からの場合
    • 水面を観察し、水面下に障害物がないかを確認します。
      • 水面下が確認できないときなどは、はしごがあればそれを利用します。
      • スクーバ式潜水と同じように水面に飛び込んだ際の衝撃で、全面マスクが外れないように注意します。
  • 潜降方法としては、
    • ステップインエントリー(ジャイアントスライド)や、潜水はしごを使用する方法が通常です。
  • 潜降の際、支援する人は、送気ホースの絡まりや船の舷や桟橋の角で、ホースを損傷しないように注意します。
  • 潜水ステージやダイビングベルなどを使用する際は、ステージへの乗り込み、送気ホース類の繰り出しなど、すべての準備が整うまでステージを降下してはなりません。
  • 岸からの場合
    • 岸から行う場合は、送気ホースなどの障害物への絡まり、下敷きなど送気ホース類の繰り出し等に注意する。
    • ドライスーツの場合は、肩の高さまで歩いて、スーツ内の余分な空気を排出してから潜降します。

潜降の仕方

  • 潜水者の装備等の点検がすべて終了し、「潜水準備よし」の合図を示したら、潜水はしごやさがり綱(潜降索)を利用して水中に入り、まず頭部まで水中に没して潜水器材、ホースなどからの空気漏れがないか、呼吸は異常なくできるかを確認します。
  • 異常がなければ、潜降索を両足に挟み、片手で潜降索をつかむようにして徐々に潜降します。
  • 潮流がある場合は、潜降索から引き離されないよう潮流方向に背を向けると抵抗ガ少なくなります。
  • 潮流による突発的な力が潜水器に及ばないよう送気ホースを腕に1回転だけ巻きつけておくと安全です。
  • 潜水墜落する危険があるので、必ず潜降索につかまって潜降速度に規定はありませんが、毎分10m程度の安全な速度で潜降することが望まれます。
  • 潜降中に耳痛を感じたときは、潜降索につかまって一旦停止し、つばを飲み込むかマスクの鼻をつまむかして耳抜きを行います。
  • 耳抜きが上手くいかないときは、数m浮上して再度耳抜きを行います。それでもダメなときは潜水の中止をします。
  • 潜水ステージやダイビングベルなどを使用する際は、潜水者はステージの中央で手すりをしっかり掴みステージ等から落ちないよう注意します。
  • 支援者は、潜水ステージやダイビングベルを降下中は、ステージなどのウインチやワイヤー、送気ホースとの絡まりに常に注意しなければなりません。
    • また、潮流や降下速度に常に注意します。
  • 潜水ステージやダイビングベルの降下速度は、ワイヤーの送り出し速度で測らず、必ず、水深計をもとにして降下させるようにします。

水底での移動の仕方

  • 水底まで潜降したら、送気ホース、電話連絡船等に異状がないことを確認してから潜降索から離れ、作業現場に向かいます。
  • 移動経路に障害物がある場合は、送気ホース等が障害物の下敷きや絡まったりしないように、障害物の上を通過し帰りも同じ経路を通ります。
  • 潮流の早い場所を移動する場合は、潮流の抵抗を減らすため屈みこむか腹ばいの姿勢をとるようにします。
  • ヘドロや泥が堆積物した場所で移動する場合は、ヘドロ等を巻き上げると視界が失われるので注意して移動するようにします。
    • ヘドロなどの場所に埋まって身動きが取れなくなった場合は、無理に脱出しようとせず、支援員に連絡して救援を求めます。

潜水者との連絡の仕方

  • 水中電話線は、常に確認しておき、船上等との交信が常に行われていることを、潜水者、船上の支援員、双方が確認し合います。
  • 水中電話がない場合や故障した場合、信号策と送気ホースを使用して連絡を取り合うようにします。
    • 潜降前に連絡員及び支援員とあらかじめモールス信号式に引き合う連絡方法を定め、確認しておきます。
  • 連絡員等は、信号に間違いがないかどうか確かめる意味と、相手に確認させるために必ず同信号を返送します。

浮上

  • 使用した道具類を始めに回収します。
  • 船上と浮上の連絡を交わしたら、潜水者はさがり綱(潜降索)のとろへ行き、岩や障害物に送気ホース類が絡まっていないか注意します。
    • 船上の支援員も余剰の送気ホース類を引き上げていきます。
  • 浮上の合図で、潜降時と同じ姿勢で徐々に浮上しますが、毎分10m以下の速度で行います。
  • 減圧症予防のため、浮上停止を行う必要があるときは、所定の水深で所定時間浮上を停止します。
  • 浮上停止が必要のない浅い場所又は短時間潜水でも、安全のために水深3m前後で5分程度浮上停止を行ったほうがよいとされています。
  • 潜水者が浮力調整によって浮上することができずに、潜降索をたぐって浮上する場合は、支援員や連絡員が潜降索を引き上げ潜水者の浮上を補助します。
  • 潜水ステージやダイビングベルを使用する場合は、潜降時と同様の姿勢で、ステージ等から落ちないように注意します。
    • 潜水者及び支援者は、潜水ステージやダイビングベルを浮上中は、ステージなどのウインチやワイヤー、送気ホースとの絡まりに常に注意しなければなりません。
    • また、潮流や潜水計画で定められた浮上停止深度等に常に注意します。
      • 浮上速度は、ワイヤーの巻き取り速度で測らず、必ず、水深計をもとにして浮上させ、毎分10m以下を必ず守るようにします。
  • エキジット(水面から出る)
    • 潜水はしごを利用して、水面から船上などに上がります。
      • 潜水者の体力が消耗しているので、船上の支援者は、潜水者が潜水はしごから滑り落ちないように注意し補助します。

潜水ステージやダイビングベルを用いた潜降および浮上

  • 潜水深度が深くなると潜水ステージと呼ばれるカゴ型の昇降機やダイビングベルが用いられることもあります。
  • 水中昇降機の担当者は、ワイヤーの送り出し速度で潜降速度を測らず、常に水深計の値に基づいて、潜降速度の調整を行わなければならない。
  • 浮上の際は、規定の浮上速度、浮上停止深度、浮上停止時間を守らなければなりません。










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